「そのとおり。所詮、東見はペテンを生業にする一族だ。だが、我々だけが悪いとも思わぬな。客がそれを求めているのだ。大金を払う価値のある、もっともらしいもの。それにすがりたいのだろう」
「う~ん、わかるような難しいような」

 初音は存外に聡明な娘だ。わかったふりをしないだけの賢さを持っている。

「露西亜との戦に負けたらどうするのです?」

 愛国心のかけらもない発言を、彼女は平然としてのける。雪為は遠くを見つめ、口元をふっと緩ませた。

「俺は戦に勝利するとは言っていない。生きている間は、戦に対し積極的な姿勢でいても大丈夫と告げただけ」
「どう違うんですか?」
「あの男は土気色の顔をしていた。本人が気づいているかは知らぬが、臓腑のどこかを病んでいる。露西亜との開戦はすぐにはならない。戦の結果を知る前に、あの男はこの世を去るだろう」

 初音はあきれた顔で目を丸くする。

「紛れもなく、ペテンですね」
「あぁ、ペテンだ」