◆◇
その日の夜、僕は二品さんに電話をし、実織を思い出したことを話した。彼女は涙声になってそのことを喜んでくれた。
『良かった……。このまま七瀬君、実織のこと忘れるだけなんじゃないかと思って不安だったから。でも、そうならなくて本当に良かった』
電話越しに、二品さんがどれほど僕のことを心配してくれていたかが分かり、胸が熱くなるのを感じた。
「ありがとう」
僕は心の底から彼女にお礼を言い、それからしばらくの間は実織の話で盛り上がった。
そして会話が終わりかけたころ、二品さんが急に真剣な声色で告げた。
『そういえば、実織の部屋から最近原稿が見つかって、もういらないらしいから親友の私が預かることになってたんだけど、この前なくしちゃってたの。それが今日見つかって。これは七瀬君に渡した方が良いかなって』
「原稿?」
一瞬、何のことだろうと疑問に思ったが、ああそうかとすぐに心得た。
実織は暇さえあれば物語を原稿用紙に綴っているような人だったから、きっとそれのことだ。僕がいつも、「何を書いてるの?」と聞いても、「見ないで!」とさっと書いたものを隠した彼女の赤ら顔が懐かしい。
前に、二品さんが机の中に手を入れて何かを探していたことがあった。それはこの原稿だったのかもしれない。
それを読めば、自ら死を選んだ実織の真意が分かるのかも……。
「二品さん、明日その原稿を持ってきてほしい」
『うん、わかった。明日渡すね』
その日の夜、僕は二品さんに電話をし、実織を思い出したことを話した。彼女は涙声になってそのことを喜んでくれた。
『良かった……。このまま七瀬君、実織のこと忘れるだけなんじゃないかと思って不安だったから。でも、そうならなくて本当に良かった』
電話越しに、二品さんがどれほど僕のことを心配してくれていたかが分かり、胸が熱くなるのを感じた。
「ありがとう」
僕は心の底から彼女にお礼を言い、それからしばらくの間は実織の話で盛り上がった。
そして会話が終わりかけたころ、二品さんが急に真剣な声色で告げた。
『そういえば、実織の部屋から最近原稿が見つかって、もういらないらしいから親友の私が預かることになってたんだけど、この前なくしちゃってたの。それが今日見つかって。これは七瀬君に渡した方が良いかなって』
「原稿?」
一瞬、何のことだろうと疑問に思ったが、ああそうかとすぐに心得た。
実織は暇さえあれば物語を原稿用紙に綴っているような人だったから、きっとそれのことだ。僕がいつも、「何を書いてるの?」と聞いても、「見ないで!」とさっと書いたものを隠した彼女の赤ら顔が懐かしい。
前に、二品さんが机の中に手を入れて何かを探していたことがあった。それはこの原稿だったのかもしれない。
それを読めば、自ら死を選んだ実織の真意が分かるのかも……。
「二品さん、明日その原稿を持ってきてほしい」
『うん、わかった。明日渡すね』



