「804、ひいらぎ いのり...ここか」
受付でいのりさんのお見舞いに来ましたっていったら「いのりちゃんから聞いてますよ」ととてもすんなり快く通して貰った。
「聞いてますよ」って名前も知らない僕の事をもう看護師さん達に話したのかと思うといのりと言う子はもうかなり長い事この病院に居るのだろうか。
ノックをしようと手をあげて少し戸惑って
勇気を振り絞ってノックをした。
「はーい! 」
中から元気な返事が聞こえてくる。
ゆっくりスライド式のドアを開ける。
「し、失礼します」
「誰? 昨日の子? 」
そうだった。彼女は眼が見えないんだった。
「そう、昨日の子」
そう言うとにっこりと微笑んでどうぞと椅子の方を指さした。
お言葉に甘えて座るけど何を話したらいいか分からない。
フと視線を落とすとテーブルの上に本が
3冊。奥の棚にも本がとても沢山入っていた。
「本、読めるの? 」
聞いてちょっと後悔した。
あまりにも直球すぎて失礼だっただろうか。
そんな僕の心配をよそにケラケラと笑い出す。
「君って結局直球だね。いいよそういうの。
変に気を使われるよりよっぽどいい」
僕と同じ事思ってる。
「普通の本はそりゃ読めないよ。でもこれなら私でも読める」
そういって本を開いて見せてきた。
そこにはたくさんの点々がぎっしりと散らばっていて、って日本語おかしいけど、そういうのが1番近い表現。とにかく細かい点が沢山連なっていた。
「点字? 」
「そう、全部点字」
「これ全部読めるの? 」
「そりゃね。例えばこれ」
『⠥⠌⠩⠊⠊⠱⠵⠇⠅⠓⠕⠃』
「早く王様になりたい」
「ライオンキングか」
「そうそう! 」
なんかずっとこれを見てると
変になってくる。
「あっ! 」
「え、なに。ビックリするんだけど」
「君さどうせ暇でしょ」
「ひどい言われようだな」
まぁ暇なことに変わりはないけど。
「じゃあさ、私が君にこれから点字を教えてあげる。毎日」
「いやいいよ。毎日なんて来れないし」
「お願い!!私病院詰めだからさ、暇なんだよ。暇なもの同士助け合おうよ。ね? お願い!!」
「いやったらいや」
「お願いします! この通り」
彼女は顔の前に手を合わし''お願い''のポーズをしてきた。
あーもう。
「分かったよ。やればいいんだろ」
明らかに嫌そうな雰囲気全開で言ったのに
「ほんとに?!やった!!」
そうやって無邪気に喜ばれるともう
「やっぱり嫌だ」とは言えなかった。
「じゃあ手始めに...」
『⠧⠃⠑⠐⠣⠀⠃⠎⠓』
「はい! 」
スマホでタタッと手早く打って耳に近づけ小さい音で何かを聞いて点字表と同時に差し出される。
1文字1文字照らし合わせていく。
これがとんでもなく時間がかかる。
「ひ...い...ら.....ぎ」
うんうんと相槌を打たれることに安心しつつ読み進めていく。
「...い、の...り? 」
「正解!!私の名前、柊 祈莉」
「スマホ触るの上手だね」
「慣れだけどね。今は問題出すために読み上げ機能の音量を小さくして読み上げを聞いてから問題出したけど本当はもっと
大音量で打ちながら音声流れるよ」
こういう風にねと打ってみせる。
大変そうだなぁなんて呑気なことを考えていると
「次、君の番」
へ? っと間抜けな声が出た。
「私君の名前も歳も性別も知らないよ? 」
「性別は分かるでしょ。声もそうだし''僕''って言ってるし」
「そんなの今の時代分からないでしょ? 」
「僕の名前は...」
「ちょっとストップ!!」
「なに」
「はい、これに打ち込んで? 」
差し出された機械。
「何これ」
「点字ディスプレイっていうの。これに打ち込んで私が当てるから」
「普通に言った方が早いじゃん」
「あーもうそういう細かいことをツベコベ言わないの! 」
なんか怒られてちょっとイラッとしたが仕方なく点字一覧を見ながら打ち込む。
これも結構難しい。
凄い時間をかけてやっと打ち込めた。
「とりあえず名前だけね。時間かかって仕方ない」
はーいと返事をして点字ディスプレイを触り始めた。
「き、さ、ら、じ...、り、か? 」
「ん? 」
「え? 」
「違う」
「でもそうやって書いてある」
そう言われてゆっくり見直すと間違えていた。
「あれ。よく見たはずなのに」
「あるあるだよ。似たの多いよね〜」
「名前は如月 梨久。高校2年。男」
「おっ。同い年だね〜。ちなみに私は女」
正直ビックリした。
祈莉は少し幼く見えていたので中学生くらい
かと思っていたからだ。
話題が終わってしまって少し沈黙が続いた。
なんか、気まづい。
「僕帰るね」
「えっもう帰っちゃうの? 」
「え、うん」
なんかまだしたい事があったのか言いたいことがあったのかとても残念そうな顔をされた。
「なに? なんかまだあった? 」
「ううん。大丈夫。明日も来てくれる? 」
「うん。毎日来るんだろ? 学校帰りになるけど」
「わっ! 良かった!!ありがとう」
感情の起伏が激しい子だな。
じゃあねと言って病室を出た。
受付でいのりさんのお見舞いに来ましたっていったら「いのりちゃんから聞いてますよ」ととてもすんなり快く通して貰った。
「聞いてますよ」って名前も知らない僕の事をもう看護師さん達に話したのかと思うといのりと言う子はもうかなり長い事この病院に居るのだろうか。
ノックをしようと手をあげて少し戸惑って
勇気を振り絞ってノックをした。
「はーい! 」
中から元気な返事が聞こえてくる。
ゆっくりスライド式のドアを開ける。
「し、失礼します」
「誰? 昨日の子? 」
そうだった。彼女は眼が見えないんだった。
「そう、昨日の子」
そう言うとにっこりと微笑んでどうぞと椅子の方を指さした。
お言葉に甘えて座るけど何を話したらいいか分からない。
フと視線を落とすとテーブルの上に本が
3冊。奥の棚にも本がとても沢山入っていた。
「本、読めるの? 」
聞いてちょっと後悔した。
あまりにも直球すぎて失礼だっただろうか。
そんな僕の心配をよそにケラケラと笑い出す。
「君って結局直球だね。いいよそういうの。
変に気を使われるよりよっぽどいい」
僕と同じ事思ってる。
「普通の本はそりゃ読めないよ。でもこれなら私でも読める」
そういって本を開いて見せてきた。
そこにはたくさんの点々がぎっしりと散らばっていて、って日本語おかしいけど、そういうのが1番近い表現。とにかく細かい点が沢山連なっていた。
「点字? 」
「そう、全部点字」
「これ全部読めるの? 」
「そりゃね。例えばこれ」
『⠥⠌⠩⠊⠊⠱⠵⠇⠅⠓⠕⠃』
「早く王様になりたい」
「ライオンキングか」
「そうそう! 」
なんかずっとこれを見てると
変になってくる。
「あっ! 」
「え、なに。ビックリするんだけど」
「君さどうせ暇でしょ」
「ひどい言われようだな」
まぁ暇なことに変わりはないけど。
「じゃあさ、私が君にこれから点字を教えてあげる。毎日」
「いやいいよ。毎日なんて来れないし」
「お願い!!私病院詰めだからさ、暇なんだよ。暇なもの同士助け合おうよ。ね? お願い!!」
「いやったらいや」
「お願いします! この通り」
彼女は顔の前に手を合わし''お願い''のポーズをしてきた。
あーもう。
「分かったよ。やればいいんだろ」
明らかに嫌そうな雰囲気全開で言ったのに
「ほんとに?!やった!!」
そうやって無邪気に喜ばれるともう
「やっぱり嫌だ」とは言えなかった。
「じゃあ手始めに...」
『⠧⠃⠑⠐⠣⠀⠃⠎⠓』
「はい! 」
スマホでタタッと手早く打って耳に近づけ小さい音で何かを聞いて点字表と同時に差し出される。
1文字1文字照らし合わせていく。
これがとんでもなく時間がかかる。
「ひ...い...ら.....ぎ」
うんうんと相槌を打たれることに安心しつつ読み進めていく。
「...い、の...り? 」
「正解!!私の名前、柊 祈莉」
「スマホ触るの上手だね」
「慣れだけどね。今は問題出すために読み上げ機能の音量を小さくして読み上げを聞いてから問題出したけど本当はもっと
大音量で打ちながら音声流れるよ」
こういう風にねと打ってみせる。
大変そうだなぁなんて呑気なことを考えていると
「次、君の番」
へ? っと間抜けな声が出た。
「私君の名前も歳も性別も知らないよ? 」
「性別は分かるでしょ。声もそうだし''僕''って言ってるし」
「そんなの今の時代分からないでしょ? 」
「僕の名前は...」
「ちょっとストップ!!」
「なに」
「はい、これに打ち込んで? 」
差し出された機械。
「何これ」
「点字ディスプレイっていうの。これに打ち込んで私が当てるから」
「普通に言った方が早いじゃん」
「あーもうそういう細かいことをツベコベ言わないの! 」
なんか怒られてちょっとイラッとしたが仕方なく点字一覧を見ながら打ち込む。
これも結構難しい。
凄い時間をかけてやっと打ち込めた。
「とりあえず名前だけね。時間かかって仕方ない」
はーいと返事をして点字ディスプレイを触り始めた。
「き、さ、ら、じ...、り、か? 」
「ん? 」
「え? 」
「違う」
「でもそうやって書いてある」
そう言われてゆっくり見直すと間違えていた。
「あれ。よく見たはずなのに」
「あるあるだよ。似たの多いよね〜」
「名前は如月 梨久。高校2年。男」
「おっ。同い年だね〜。ちなみに私は女」
正直ビックリした。
祈莉は少し幼く見えていたので中学生くらい
かと思っていたからだ。
話題が終わってしまって少し沈黙が続いた。
なんか、気まづい。
「僕帰るね」
「えっもう帰っちゃうの? 」
「え、うん」
なんかまだしたい事があったのか言いたいことがあったのかとても残念そうな顔をされた。
「なに? なんかまだあった? 」
「ううん。大丈夫。明日も来てくれる? 」
「うん。毎日来るんだろ? 学校帰りになるけど」
「わっ! 良かった!!ありがとう」
感情の起伏が激しい子だな。
じゃあねと言って病室を出た。