手術の日まで僕と祈莉はずっと一緒だった。
 先生や祈莉の家族の提案で。
 最初は大切な家族の時間を奪ってしまう事に罪悪感があったのでやんわりお断りしていたが正直僕もそうしたい気持ちがあったから
 一緒に居させてもらうことにした。
 写真集の景色を伝えたり、「これなんでしょうクイズ」をしたり、点字で文を作ったり、他愛もない会話をしたりして過ごす。
 別にこの手術で祈莉が死ぬ事が決まった訳じゃない。でも皆が成功すると信じていても
 相当難しい手術という事に変わりはなかった。
 それは言われなくても先生だったり家族だったりの僕達への配慮や空気で感じ取れる。
 だから今が最高だと思える時間を過ごしたかった。
 手術が成功して祈莉が見えるようになったら
 また今の最高を超えればいい。
 そういう気持ちで手術の日まで一緒に過ごした。