「バス停着いたよ」
 「おぉ!  長かったね〜」
 たった1キロ弱の道を僕らは30分くらいかけて歩いてきた。
 でも全然苦痛に感じない。
 「久々にコンクリートを感じたよ」
 足をポンポンと地面に付ける。
 「ずっと院内にいたもんね」
 そう言いながらハンカチで祈莉の汗を拭いてあげた。
 「ん。ありがとう」

 「バス、来たよ」
 並んでるのは僕達だけだったので時間をかけて乗らせてもらった。
 2人揃って優先席に座る。
 席に着いても2人ともなんとなく繋いだ手を離さなかった。バスで何気ない会話をする。
 皆からしたらごく一般的な行動だけど
 僕達にはとても大切な時間だった。
 運転手の人が目的地をアナウンスする。
 「ここ?  」
 「うん。ここ」
 「ボタン、押してもいい?  」
 「いいよ」
 祈莉の手を引っ張ってボタンのところに持っていく。
 〈次、止まります〉
 「わっ!  次、止まりますだって」
 そんな事でもクスクス楽しそうに笑う祈莉を見て僕も微笑む。