病院に来た。
別に祈莉に会いにでは無く。
自分の検査で。
「祈莉ちゃんと何かあったのかい?」
嵐山先生に聞かれる。
「祈莉ちゃんが、最近夜1人でよく泣くようになったんだよ。本も全然読まなくなってね。ボーッとしてご飯もあまりちゃんと食べてくれないんだ。良かったら病室覗いて上げてよ」
「祈莉にもう来るなと言われたので」
嵐山先生と後ろの看護師さんが明らかにびっくりした顔をした。
「祈莉ちゃんがそう言ったのかい?」
「はい」
看護師さんがこちらに近づいてきて話を始めた。
「祈莉ちゃんね。夜泣いてる時梨久君ごめんねっていつも言ってるの。私も祈莉ちゃんみたいな子を何人も見てきてるから思うんだけど。あぁ言う自分の寿命があまり長くない子って1度そうやって大切な人を遠ざけたがるの。小説とかでよく見ない?そういうシーン。祈莉ちゃんは自分が死へ近づいてる恐怖と大切な人を悲しませる申し訳なさ、大切な人がいる事で死ぬのが怖いと思ってしまう事に混乱してそんな事言っちゃったんじゃないかな」
「祈莉ちゃん、病室にいるよ」
軽くお辞儀をして診察室を出た。
向かうのは祈莉の病室。
僕は馬鹿だ。
約束したじゃないか。ずっとそばに居るって
「祈莉」
ノックもせずに病院に入る。
「え...?」
ベッドからゆっくりゆっくり身体を起こす。
やせ細り顔色も青白くてベッドから起き上がるだけで少し息が上がっていた。
「梨久君?なんで」
「僕さ祈莉に来ないでって言われてから世界から色が無くなったみたいだったんだ。前の、祈莉に会う前のただ息をしてるだけみたいだったんだ。上手く言えないけどさ僕が祈莉に色を付けてるんじゃない。僕が祈莉に色を付けてもらってたんだ。だからさ。傍に居させてよ」
走ってきたから息が整わない。
息を切らしかながら、でも必死になってそう言った。
祈莉はびっくりして眼を真ん丸にさせてたけど
笑って
笑いながら涙を零した。

帰り道。
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