「おはよ」
 「おはよ。ほんとに来てくれると思わなかった」
 「じゃあ帰ろうか」
 「ごめんごめん冗談だよ。行こ」
 スマホをちらっと見る。
 まだ祈莉からの問題は来ていない。
 「どこ行くの。僕行先聞いてない」
 「あれ、そうだっけ今日は水族館」
 「今日はって何」
 「さぁね」
 目的地に到着。
 死ぬ程暑かったので涼しい館内はとても有難かった。
 「わっ見て、タツノオトシゴ」
 「うん凄いね」
 「ほんとに思ってる? 」
 「思ってるよ」
 スマホを見る。
 通知はゼロ。
 タツノオトシゴを初めとしてペンギン、熱帯魚、イルカ、色々な魚を見た。
 清水菜々はいちいち反応がでかかった。
 多分僕は4匹に1回くらいスマホを確認していたと思う。
 こんなのが彼氏だったらきっと1日で破局するだろうな。
 後半になるにつれてスマホを確認する度に清水菜々に見られるようになった。
 なんとなく僕の中でつまんなそうにしとけば次は誘われないだろうと思っていたからちょっとわざとな所はあった。
 でも帰りの電車でまさかの一言。
 「明日はカフェ行こ。行きたいカフェがあるの」
 「え? 明日? 」
 「うん。明日」
 「カフェ? 」
 「うん。カフェ」
 「よく今日僕と一緒にいて明日もいたいと思えるよね」
 「一緒に居たくないと思われる自信があったってこと? 」
 「まぁそうだね」
 「大丈夫。安心して。思ってないから」
 彼女が何を考えてるか分からなかった。
 この会話をしてる時も笑顔1つなく車窓の外をじっと見て淡々と話してくる。
 「あ、私この駅だから。じゃあまた明日ね」
 「うん」
 スマホを見ると通知が1件。
 でもすぐに返さなかった。
 清水菜々からだったから。今日も暑い。
 灼熱だ。恐るべし夏。