「ごめん、唯葉。わたし、ちょっと職員室に呼ばれてるんだ。だから、先にお昼食べといて」
「何かあったの? ついていこうか?」
「大丈夫。たいしたことじゃないよ。この前提出した英語の課題のことで呼ばれただけだから」
「そっか。じゃぁ、用事が終わったら連絡して」
「今日はわたしのことは気にせず、先輩と食べてきてくれてもいいよ」

 さりげなくそう促したら、唯葉が少し顔を赤くしてうつむいた。

「じゃぁ、先輩誘ってみようかな」
「うん、うん。そうしなよ」

 今日に限っては、唯葉に待っていてもらうよりも、彼氏とか他の誰かと一緒に昼休みを過ごしてもらうほうが都合がいい。

 わたしは唯葉が同じ学校に通う一つ上の彼氏に連絡を取るのをしっかりと見届けてから、化学準備室に向かった。途中で思い立って、自動販売機で無糖の缶コーヒーを買う。昨夜、那央くんに迷惑をかけた分のお詫びだ。

 化学準備室のドアをノックして横に引くと、今日はすんなりとドアが開く。すぐ正面のデスクで、おにぎりを齧りながらパソコンに向かっている那央くんは、わたしが来たことに気付かない。

「失礼しまーす」

 ドアの外から声をかけると、那央くんがおにぎりを手に振り向いた。