玄関から飛び出したいのを我慢して、ギュッと右手を握りしめる。

 その数時間後。健吾くんは宣言どおり、必要最低限の荷物を纏めて家から出て行った。母が止めようとしても、聞かなかった。

「真由子さんと俺の再婚のこと、沙里は本当は納得できてなかったんだよね? 沙里が俺のことを家族として受け入れてくれる気になったら連絡して」

 家を出て行く前、健吾くんは部屋にこもっているわたしにドア越しに声をかけてきた。

 初めて出会ったときからずっと温め続けてきた健吾くんへの恋心。それを全部、否定するような言葉を残して。