手の中には、那央くんからもらったコンビニのツナマヨおにぎりがひとつ。照れ臭さもあって笑って誤魔化したけど、那央くんが「誕生日プレゼント」と言っておにぎりを渡してくれたとき、胸の奥がブワッと熱くなって、バカみたいにときめいた。
昨夜、健吾くんにオシャレなフレンチレストランで誕生日をお祝いしてもらった。それなのに、豪華なコース料理よりも百数十円のおにぎりをもらったほうが嬉しいと思ってしまうなんて。十七歳のわたしは、まだまだモノの価値のわからない子どもだ。
「沙里、どこ行ってたの? 何度連絡しても返信ないから、先にお昼食べちゃったよ」
教室に戻ると、唯葉が少し不貞腐れた顔で歩み寄ってきた。
「ごめん、ちょっと化学準備室に行ってた」
「化学準備室って、那央くんのとこ? もしかして、この前の写真流出のことで、また呼び出された? あれから、まだ嫌がらせのDMとかきてる?」
健吾くんと撮られた写真のことで嫌がらせを受けたり、生徒指導の先生に呼び出されそうになってから、唯葉はわたしのことをすごく心配してくれる。
昼休みにいなくなったわたしに何度かメッセージをくれたのも、誰かから嫌がらせを受けていないか心配してのことだったんだろう。