「健吾くんがわたしを心配してくれるのは、わたしが真由子さんの娘だからなんだよね。昔から優しくしてくれるのも全部、わたしがお母さんの娘だから」
「沙里が真由子さんの娘だからとか関係なく、ちゃんと沙里のことも大切に思ってるよ」
「だったら……!」
「ごめんね」
健吾くんが、哀しそうな目をして僅かに首を横に振る。その言葉と仕草で、わたしの気持ちはこの先何があっても絶対に受け止めてもらえないんだと悟った。
「ごめんね。沙里の気持ち、本当は前からなんとなく気付いていた。俺は沙里の父親と名乗るにしては若すぎるし、まだまだ頼りないだろうけど、それでも俺は沙里とは家族に――」
「わかってる」
健吾くんが辛そうな顔をして、一生懸命に何かを伝えようとしてくれていたけど、わざと話を遮った。
最後まで聞いていられなかった。充分にわかりすぎている事実を、健吾くんの口から告げられるのはキツい。胸が、苦しい。
それでも、苦しいのを我慢して笑顔を作った。そうしないと、健吾くんがもっと辛そうな顔をすると思ったから。