「靴擦れ、大丈夫?」
お互いに相手の出方を待っていると、健吾くんがわたしの足元を見ながら先にそう訊ねてきた。
そういえば、那央くんの彼女のサンダルを借りたままだ。元々履いていた靴も、那央くんの車の助手席の下に置き忘れてきてしまった。
「うん、もう平気」
「葛城が絆創膏とサンダル用意してくれたんだな。あとでまたお礼言っとかないと」
健吾くんが、つま先の広く空いたサンダルから少しだけ覗いている小指の絆創膏を見つめてつぶやく。
「ごめんなさい。絆創膏買いに行こうとしてくれたのに、黙っていなくなったりして。電話も、出なくて」
健吾くんから少し視線をそらしながら謝ると、彼が視界の端でゆるりと首を横に振った。
「いいよ。無事に戻ってくれたから。俺がついていておいて沙里に何かあったら、真由子さんに申し訳が立たない」
健吾くんの言葉を聞いて、ピクリと頬が引き攣った。
那央くんにフォローされなくても、健吾くんがわたしを心配してくれていることはちゃんとわかっている。
でも、あんなことがあったあとだから。純粋にわたしだけを心配してほしかった。わたしを心配する理由を、母のせいにしてほしくなかった。我儘だと頭ではわかっているのに、心がザラついて嫌な気持ちになる。