「頑張ってたんだな」

 波の音に紛れて、那央くんの低く穏やかな声が聞こえてくる。

 頑張ってた……。そう、きっと頑張ってたんだと思う。

 那央くんにあやすように頭を撫でられて、健吾くんにフられた直後には出なかった涙が今頃になって溢れてきた。

 わたしの気持ちが本気だったことを認めてくれる。那央くんのこの手は、やっぱり公正だ。