「那央くん、この人の曲知ってる?」
わたしは検索欄に最近流行っている男性アーティスト名前を入れると、出てきた曲のリストの中から数ヶ月前に配信されたばかりの最新曲を選んで再生した。
ギターで始まるイントロのあとに入ってくる、優しく甘い伸びのある声。運命的に出会った人への、ほろ苦くて切ない、伝えられなかった恋心を歌う曲だった。
聴き方によっては失恋の歌のようにも思えるし、未来で恋が成就する歌のようにも思える。そんな歌詞と流れるような綺麗なメロディーが、共感を呼んで心を揺らす。
しばらく聞き入っていると、そこに「あぁ、曲名わかんないけど聞いたことあるな」という那央くんの声が混ざった。
「これの何曲か前に出してたやつがすごいバズったんだっけ? 最近、若者のあいだで流行ってるみたいだよな」
「若者、って」
綺麗な顔をして、那央くんがオジサンみたいなことを言うのがちょっと可笑しい。