わたしが向かったのは、以前、夜中に家を飛び出したときに那央くんと会ったコンビニだった。

 彼の家はこの近くらしいが、住所を知っているわけではない。この前コンビニのそばで出会ったのだって、ただの偶然だ。

 それなのに、唯葉以外に頼れる人がいないかと考えたときに思い浮かんだのは、何故か那央くんの顔だった。

 コンビニの周囲をうろついたあとに店内も探してみたけれど、そんなに都合よく彼に会えるはずもなく。仕方なく、絆創膏を買ってコンビニを出た。ここまで歩いてくるあいだに本当に靴擦れがひどくなり、足の痛みが我慢できなくなっていたのだ。

 コンビニの入口の横の壁に凭れて右足の靴を脱ぐと、小指の先にビリッと電流のような痛みが走った。小指の横側が、赤くなって小さな水膨れができている。今にもはじけそうなそれにそっと触れると、絆創膏を小指ごとグルリと巻き付けた。

 本当に、最悪な誕生日だ。絆創膏を貼るために左側の靴も脱ぎながら、深いため息を漏らす。

 左足の靴擦れは、右足に比べれば軽傷だった。それでも痛いことには変わらないため、さっきと同じように小指ごとグルリと絆創膏を巻き付ける。

 さて、これからどうしよう。途方に暮れてしゃがみ込んだそのとき。

「岩瀬?」

 呼びかけられて、ハッとした。顔を上げると、さっきどれだけ探しても見つからなかった那央くんが、コンビニの入り口の前に立っていた。

「見慣れない格好してるから人違いかもしれないと思ったけど、やっぱり岩瀬だ。こんなとこで何してんだ?」

歩み寄ってきた那央くんが、わたしの前にしゃがむ。急に無遠慮に顔を覗き込まれて、ドクンと胸が鳴る。微妙に視線をそらすと、彼が意地悪く口端を引き上げた。