「一年限定でも、ケジメって大事かなーって思うわけ。言っても、誰も聞いてくれないけど」
「やっぱり、マジメだ」
「ほっとけ」

 ハハッと声をあげて笑うと、那央くんがわたしの頭に手を置いて上から雑に押してきた。

 顔からテーブルに軽く押し付けられて、葛城先生の表情が見えなくなる。

 彼が今、困っているのか、少し怒っているのかはわからないけど、頭に載せられたままの手は優しくてあたたかい。その温もりに触れていたら、自分と他人が「平等」がどうかなんて、どうでもよくなった。

 少なくとも、今触れているこの手は、わたしに対して公正だ。