「岩瀬には、授業サボってまで考えたくなるほど、平等じゃないって思ってることがあるんだ?」
「そうですね。この人が言いたかった『平等』とわたしが思う『平等』の定義はきっと違うんだろうけど」

 葛城先生の鳶色の瞳を見つめ返しながら思い浮かべていたのは、健吾くんの顔だった。

 健吾くんが好きな人は、どうしてわたしの母なんだろう。どうしてわたしは、母よりも先に健吾くんと会うことができなかったんだろう。彼のことを好きだと思う気持ちは、母もわたしも変わらないのに。


「わたしに見えている世界は、不公平ばっかりです」

 ボソリとつぶやくと、葛城先生が僅かに眉根を寄せた。


「いろいろ難しいよなー。思春期って。まぁ、何かあれば、ちょっとくらいは頼ってきな」

 一年限定で来てるだけの非常勤講師のくせに。エラぶってわたしの頭をグシャリと撫でてくる葛城先生は、何もわかっていないし無責任だと思う。だけど、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。