ピンクと白を基調にして纏めてもらったお供え用の花を花立に挿し、線香に火を点ける。墓石の前で静かに両手を合わせていると、ジーッと蝉の鳴く声が耳に響いてくる。心の中で彼女への報告をしてゆっくりと顔をあげると、背後でカサリと靴の擦れる音がした。
「ひさしぶり、那央。来てくれたんだ……」
何ヶ月ぶりかに聞く声を少し懐かしく思いながら振り返ると、そこには夏乃が立っていた。黒のワンピースを着た彼女の手には、おれが選んだのと同じ、ピンクと白でまとめて墓花が控えている。
おれの姿を見つけて困ったように眉を下げていた夏乃は、墓石の花立に自分が買ってきたのと同系色の花が入れられているのに気付くと、ふっと息を漏らした。
なぜだかわからないが、付き合う前から夏乃とはそんなところばかり気が合う。もっと他のところで気が合えば、おれたちはお互いを傷つけ合うことなく、共に歩むことができたかもしれないのに。
「そりゃ、来るよ。夕夏の命日だし」
「そうだね。毎年、来てたもんね」
「うん」
少し横にずれて、墓石の前のスペースを空けると、夏乃がおれの隣に並んで、持っていた花を花立に挿した。