二時間前、昇降口で別れた唯葉には「寒いのに、今日も待つの?」と、呆れたように笑われた。唯葉には「平気だよ」なんて強がってみせたけど、思ったよりも平気じゃない。

 今日は特に寒い。あんまり寒いから、学食の外の自動販売機まで走って温かい飲み物でも買いに行きたいくらいだけど、そのあいだに那央くんが出てきてすれ違っても困る。

 震えながら葛藤していると、校舎のほうから黒い人影が近付いてきた。

 那央くん、やっと出てきた。嬉しくなって、我慢できずに駆け寄ると、那央くんがわたしを見下ろして呆れたように目を細めた。

「やっぱり、また外で待ってた」

 ため息とともに、那央くんの口から漏れた白い息。直接言葉にされたわけではないけれど、迷惑だと態度で示されたような気がして落ち込む。

 うつむいて、シュンと肩を落とすと、那央くんがわたしの頬にハンドタオルを押し付けてきた。だけどそれは、タオルにしては温かい。そして、固い。

 顔を上げると、那央くんが呆れたように笑いながら、ハンドタオルに包まれた何かをわたしの手に握らせる。

「砂糖入りなら飲めるんだよな?」

 渡されたハンドタオルを開けてみると、そこにはホットカフェオレの缶が入っていた。

 わたしが無糖のコーヒーが飲めないと言ったのを覚えてくれていたのか、缶にはミルクたっぷりという表記がされている。