『どうして、好きになった人が自分を好きになってくれる可能性は、みんなに平等じゃないのかな』
いつか那央くんに訴えた疑問は解決なんかしてなくて。不平等なままなのに。
どうしたってその距離がゼロにならないことがわかりきっている相手にばかり惹かれてしまうわたしは、恋愛に関する学習能力が低いのだ。
「いつからとか、もうわからない。だけど事情があって、わたしが勝手にそばにいたい」
唯葉の手を握り返しながらつぶやくと、彼女が哀しそうに瞳を揺らした。
特別になれなくてもいい。好きになってもらえないことが不平等だ、なんて、不貞腐れたりもしない。
気持ちが届かなくても。幸せな恋にならなくても。雨の日だけでいいから、那央くんの近くにいたい。
「相手が自分のこと好きじゃなくても、そばにいたい。そういう気持ちは不毛だ、って。唯葉は笑う?」
「笑わないよ。そういう気持ち、わたしもよく知ってる」
唇をぎゅっと引き結んだ唯葉が、わたしの手を離す。
「ありがとう」
納得はしていないくせに、わたしの気持ちは受け入れてくれる。優しい唯葉に、わたしは薄く微笑みかけた。