翌朝学校に行くと、唯葉がわたしの机のそばで腰に手をあてて待ち構えていた。普段はふわふわしている唯葉の目に珍しく力が入っていて。かなりのご立腹のようだ。

「沙里! 昨日はどうして電話もメッセージも返さなかったの?」
「ごめん……」

 おはよう、の挨拶よりも先に、昨日の既読スルーの着信無視を指摘されて、ただただ謝るしかない。

「わたしになにか話すことあるよね?」

 ググッと顔を寄せて迫ってきた唯葉に、ものすごく限定的な訊き方をされて、言葉に詰まった。まるで唯葉は、わたしが昨日、メッセージにも着信にも応えなかった理由を知っているみたいだ。
 
 でも、どうして……。わたしは一度も、唯葉に那央くんとのことを話していない。

 視線を左右に泳がせていると、唯葉が腰から手を離して胸の前で腕を組んだ。

「沙里が話さないなら、わたしから訊いてもいい?」
「なに?」
「沙里、昨日の夜、那央くんと一緒にいたでしょ」
「え?」

 思わず漏れた声で、動揺がバレたのだろう。質問に肯定したわけでもないのに、唯葉が「やっぱり」とつぶやいた。