細い体で手を大きく伸ばしながら、木の枝を筆代わりに砂地にきれいな円を描くと、少年はそこへ十字を書き入れた。
 どうやら円の直径と中心を明らかにしたらしい。
 そして、半径の中点を取ると、そこを中心として円周の交点までを半径とした弧を描き、それが十字線と交わる点に印を付ける。
 さらに、十字線のてっぺんからその点までの長さを半径として弧を描き、元の円との交点に印を付ける。
 何度も書いているのか、ずいぶんと手際が良い。
「おぬし、何をしておるのだ?」
 少年は答えず、指を広げて長さを測り取りながら円周に印を付けていく。
 それらを結ぶときれいな正五角形ができあがるのだった。
「おお、おぬしすごいな」
 新久郎は少年の向かい側へ回り込んで図形を食い入るように見つめた。
「これはおぬしが考えたのか?」
 少年は口をとがらせながら新久郎を見上げてにらみつけた。
 なんとも生意気な表情だが、よく見ればなかなかの美少年だ。
 新久郎は澄んだ泉のような少年の瞳に引き込まれていた。
 と、少年が下を向いて、せっかく描いた図形を手でこすって消してしまう。
「もったいないではないか」