「でさー、本当のところはどうなのー、恵麻ちゃん?」
「えっと、何の話?」
駅前のファストフード店でフライドポテトを口に運びながら、彼女が脈絡もなくそう聞いてきた。
「だーかーらー、織矢くんの話。恵麻ちゃん、本当に織矢くんに協力してあげないのー?」
あかりの無垢な瞳が、私をじぃーと見つめてくる。
「……あげないよ。本人にも何度もそう言ってる」
「そっかー。うん、そうだよねー」
今度は足をブラブラさせながら、抑揚のない声で返事をするあかり。
「でも、それでも諦めないなんて、織矢くんはよっぽど恵麻ちゃんに『シンデレラ』を演じて欲しいんだねー」
しかし、あかりはこの話題を続けたいようで、話を広げていく。
「ねぇ、知ってる? 文化部の3年生って、文化祭の発表で引退なんだってー」
「へー、そうなんだ」
「じゃあー、織矢くんも次の文化祭が最後の公演ってことになるよねー? だって、あかりたちも3年生なんだから」
まぁ、そういうことになるだろう。
私もあかりも、そして織矢くんだって、これから大事な受験を控える高校3年生だ。
本当は、私だってすぐに家に帰って参考書を開かないといけないかもしれないけれど、受験生にだって、学校の帰りに揚げたてのポテトを食べるくらいの息抜きは許してほしい。