恵麻(えま)ちゃん、相変わらず織矢くんにモテモテだね~。羨ましいなぁ~」

 すると、まるで待ち構えていたかのように、ニコニコと笑顔を浮かべた女子生徒が私に近づいてくる。

「……そう思うんだったら、あかりが変わってよ」

「えー、それは無理なんじゃない? だって、織矢くんが振り向いて欲しいのは、恵麻ちゃんなんだからー」

 へへ~、と、見ているとこっちが癒されるようなゆる~い笑みを浮かべる。

 綺麗に切りそろえた前髪と、ボブカットの髪型という見た目に引っ張られるからなのか、同じ学年だというのに、幼さがまだ残っているような印象を受ける。


 彼女の名前は虹咲あかり。

 クラスは違うけれど、私と同じ乙宜野高校に通う幼なじみだ。


 そして、友達が少ない私の唯一無二の親友だったりする。

「ねえねえ、恵麻ちゃん。あかり、帰りにポテト食べたいから、一緒にお店行こうよー」

「別にいいけど、あかり、昨日、ダイエットするとか言ってなかったっけ?」

「えっ、そんなこと言ってったっけ?」

「私が質問してるんだけど……。まあ、いいや。別にいいよ。私もお腹減ったし」

「やったー。それじゃあ、レッツゴー♪」

 ふんふ~ん、と、楽しそうにスキップしながら先へ行くあかりに付いていきながら、私はもう一度立ち止まって、後ろを振り返る。

 だけど、やっぱり織矢くんの姿はなかった。

「恵麻ちゃん、どうしたの?」

「……ううん、なんでもない」

 私はあかりにそう言って、再び彼女の後に付いていくのだった。