10月上旬の昼休み。

 私が通う、公立乙宜野(おとぎの)高校の生徒たちの制服も夏服から冬服に変化し始めた季節。


 私は、クラスメイトからのストーカー被害に遭っていた。


灰谷(はいたに)さん! 灰谷さん! 待ってよ! ねぇ、ってば!」

 念のため、もう一度言っておこう。

 私は、クラスメイトからのストーカー被害に遭っていた。

「おーい、灰谷さん! 聞こえてる!? 聞こえてるよね!?」

 授業を終えて、足早に教室から立ち去った私を、今日も彼が必死に追いかけてくる。

「ねえ、あれ、何?」

「ああ、また灰谷さんを説得しようとしてるんでしょ。昨日もそうだったし」

 当然、こんな状況になれば、私は周りの生徒たちから注目の的だ。

 だけど、そんな私を助けてようとする生徒はいないし、それどころか話のタネが出来たと言わんばかりに、ヒソヒソ声で友達同士盛り上がっていた。

 なんだ、私は学校の廊下でパレードでもしているのか。

 それなら、某有名テーマパークのように軽快な音楽を放送室から流してほしい。

 ……いや、やっぱそんなことしなくていいです。

「ま、待ってよ……灰谷さん……」

 そして、校舎を出たくらいになると、後ろから追いかけて来た男子生徒は、息を切らしながら諦めず私に付いてくる。

「…………はぁ」

 ここでようやく、私は大きなため息と共に立ち止まり、勢いよく振り返る。