しかし、織矢くんはそんな私に気付いていないのか、さも当然のように言った。

「魔女は、シンデレラが舞踏会に行きたいという夢を叶えてあげたでしょ? だけど、いつかは魔法なんかなくても、彼女が夢を叶えることができるって信じていたから、1日だけにしたんじゃない……かな?」

 最後は、自分でも確信が持てなかったのか、少し声のトーンが落ちてしまっていた。

 だけど、私の心には、はっきりの織矢くんの言葉が届いた。

「……ふふっ、やっぱり、織矢くんって変な人」

「へ、変、かな?」

 思わず笑ってしまった私だったけれど、成程、そういう考えもあるのか。

 だったら、今日の私は、魔女に魔法をかけられたシンデレラと一緒で、たった一度だけ、舞台の上で踊る夢を叶えてもらっている。


 だけどもし、魔法が解けた後でも、自分の力で夢を叶えることができるのなら。

 私はもう一度、舞台の上に立って、新しい夢を見つけよう。