「よし、僕も足を引っ張らないように頑張らないと……」

 しかし、私の発言のせいで、また織矢くんは緊張してしまったらしい。

 このままでは、彼の最後の公演に悔いを残してしまう可能性がある。

 幕が上がる時間までは、まだもう少しだけ猶予があったので、私は織矢くんの緊張を解くためにも、ちょっとした質問を彼にぶつけることにした。

「ねえ、織矢くん。私ね、ずっと『シンデレラ』のお話で気になってることがあるんだ」

「気になってること?」

 不思議そうに首を傾げる織矢くんの反応を見ながら、私は彼に言った。

「なんで、シンデレラに魔法をかけた魔女は、12時までしか魔法をかけてあげなかったんだろうね」

 えっ? と声を漏らす織矢くんに、私はそのまま告げる。

「ずっと魔法をかけてあげれば、シンデレラだって幸せだったのに」

「…………」

 私の疑問に、織矢くんは頭を悩ませているようだった。

 少し申し訳ないことをした気もするけど、これで緊張も紛れてくれたら御の字だ。

「いいの、気にしないで。どうせ、こんなのいくら考えたって答えなんてないもんね」

 そう言って、私がこの話を終わらせようとしたときだった。


「それは……魔女がシンデレラのことを信じていたからじゃないかな?」


「……えっ?」

 今度は、私が織矢くんの言葉に首を捻る番だった。