「僕が灰谷さんを、絶対にシンデレラにしてみせるから!!」
それは、根拠なんて何もない言葉のはずなのに。
「私が……シンデレラに……」
気が付くと、私の頬からは、一筋の涙が流れ落ちていた。
「うん。だから、灰谷さん。今まで何度も言ってきたことかもしれないけど……」
そして、彼は椅子に座っている私に視線を合わせるかのように、片膝をついて、手を伸ばす。
「シンデレラを演じることが出来るのは、キミしかいないんだ」
そう差し出してきた手には、何も載せられてはいない。
だけど、確かに私には、砕けて消えてしまったはずのガラスの靴が見えたのだった。