――ねえ、恵麻。

 すると、舞が話を締め括るように、とんでもないことを口にした。


 ――『シンデレラ』の公演、一緒に頑張ろうね。


 一緒に頑張る、だって?

 馬鹿言わないでよ。

 頑張るのは、舞だけじゃない。

 いつもいつもいつもいつも、あなたが舞台でスポットライトを浴びる。


 私は、いつも舞の姿を舞台袖から見るだけ。

 私は、舞の代替品。


 駅のホームに、電車が近づいてくる。

 すると、舞は電車を見ること自体が珍しいのか、少し前に出て、線路を覗き込むような体勢を取った。

 それを見た瞬間、私の中のどす黒いものが、一気に溢れ出した。


 私はいつも、舞の代替品。

 だったら、舞がいなくなったら、どうなるのだろう?


 そうだ、私がシンデレラになる為には。



 舞が、いなくなっちゃえばいいんだ。



 私は舞の背中に向かって、手を伸ばす。

 電車は、もう数秒もすれば、私たちの前を通り過ぎる。

 そして、私は……。