「舞は、歌も演技も、出会った頃から完璧だったの。それに、どんな人からも好かれる性格をしてて、正直、私は舞が羨ましかった」
全てが完璧な舞に、私は自分との実力の差を認めざるを得なかった。
これで、舞が少しは嫌味な人だったら、私も素直に嫉妬できたのかもしれない。
だけど、舞はそんな子じゃなかった。
初めて出会った時も、『これから一緒に頑張ろうね』と、笑顔で話しかけて来てくれるような子だ。
そのときから、もう私は舞には敵わなかったんだと思う。
それでも、当時の私は、舞と同期であることを喜んでいた。
私が目標に出来る子が近くにいれば、私も一緒に成長できるんじゃないかと、本気でそう思っていた。
「でも、私はいつまで経っても舞には追い付けなかった……。どんなに頑張っても、舞は一歩も二歩も、私の前を行くの……」
それを実感してしまうのに、長い時間は掛からなかった。
1年もすれば、自分の立ち位置が嫌でも分かってしまう。
舞は、中学生ながらも『星宙』の舞台に少しずつ立つようになっていった。
一方、私は舞台裏の手伝いだったり、舞が怪我や病気をしてしまったときの代役としての練習を繰り返すばかりだった。
「それでも、私もいつか舞台に立てるんじゃないかと思って、諦めなかった。いつか頑張っていれば、私にもチャンスが来るんだって、自分に言い聞かせていたの」
頑張っていれば、いつか努力は必ず報われる。
そう思って、必死に頑張ってきた。
だって、私がなりたいと思ったシンデレラは、そういう物語なんだから。
「だけど、私と舞が高校に進学する頃に、次の『シンデレラ』の公演で、舞がシンデレラ役をすることが決まったの」
その報告を、劇団のマネージャーから聞いたときは、目の前が真っ暗になった。
ずっと私が追いかけていた夢が、壊れた瞬間だった。