「……私、小学生のときに『星宙』の入団試験を受けたの。それで……合格した」

「……えっ? ええええええっ!?」

 私の発言に、織矢くんは大声を上げて反応する。

「す、凄いよッ灰谷さん!! あの『星宙』の入団試験に受かるなんて!!」

 私が演劇をやっていたという話を聞いたときよりも、何十倍も興奮した様子で迫って来る織矢くん。

 だけど、今回ばかりは、彼がこんなに驚くのも無理はないことだった。

 劇団『星宙』は、毎年2000人以上の入団希望者がいて、その中から2人ほどしか合格者が出ない超難関の入団試験が用意されている。

 とは言っても、それは即戦力を採用する話であって、本試験とは別に、私のような子供は将来を見据えられた育成枠として、仮入団させられることがある。

 それでも、大人たちと同じように、僅か0,1%程の合格率しかなく、中には、既に子役として芸能事務所に所属している子でさえも落とされてしまうほどの厳しい試験であることは間違いない。

 そんな入団試験を、何故か私は合格してしまった。

 私と一緒に入団した子は、昔からバレエや演技のレッスンなど、それこそ漫画でしか聞いたことのないようなお嬢様育ちの女の子だった。

 一方、私は両親にお願いして、歌やバレエのレッスンを通わせてもらって、小学6年生になった頃に、ようやく形にできたくらいだった。

 そんな私が、憧れだった『星宙』の門を叩くことを許された。

 合格通知を貰った時は、夢なんじゃないかと思ったけど、両親は2人とも私より号泣して喜んでくれたし、その頃から既に親友だったあかりからも、お祝いで手作りケーキを用意してくれて、私の合格を祝ってくれて、ようやく実感していくようになった。


 私は、本当にシンデレラになれるかもしれない。


 初めて見た、綺麗なドレスに身を包んだシンデレラのことを思い浮かべながら、私はそう思った。