――私は今、一体、どんな顔をしているのだろうか?


 そんなの、ズルい。

 どうして、そんなことを私に言ってくるの?


 ぐちゃぐちゃになりそうな感情を何とか抑え込んで、私は彼を質問する。

「織矢くん……あかりから、私のことで何か聞いてる?」

「虹咲さんから? いや、それが……」

 すると、織矢くんは少し言いにくそうにしながらも、最終的には言ったほうがいいと判断したのか、私に告げる。

「灰谷さんが話していないのなら、自分は話さないって……」

 成程。そういう配慮だけは、徹底している。

 だけど、それは逆に、あかりから私へのメッセージのようにも感じとれた。

 あの子の思惑通りにずっと動いてしまっているのは悔しいけれど、ここまで来てしまったら、もう引き返すことはできない。

 あかりは、自分のことは自分で話せと、私にそう言っているのだ。

「……じゃあ、教えてあげるけど、私、やってたよ、演劇」

 私は、織矢くんに自分の過去を白状する。

 今さら、隠していたって仕方がないことだ。

 実際、織矢くんは「やっぱり」といった表情を浮かべるだけで、オーバーリアクションの多い彼をずっと見て来たので、少し物足りなさを感じてしまう。

 しかし、そんなことに文句をいうつもりもないので、話を続ける。

「きっかけは、織矢くんと同じだよ。私もね、小さい頃に『星宙』の演劇を観に行ったの」