だが、次の日。
私の予想外のことが起こった。
いつものように、担任の先生からの連絡事項が伝えられたHRが終わると共に、私のところに織矢くんがやって来る。
「……あれ?」
……ことはなく、なんと彼は、そのまま教室から出て行ってしまったのだ。
あれだけ毎日、私を勧誘しようとしていた織矢くんが、今日は来ない?
ここ最近は恒例となっていた私と織矢くんの追いかけっこが始まらなかったので、クラス内もざわざわとした空気が流れ始める。
しかし、そんな空気もすぐに消えて、クラスメイトたちはお互いに談笑を交わしながら、教室から出て行ってしまう。
それでも、私はしばらく鞄を持ったまま、その場で立ち尽くしてしまっていた。
教室から出て行くときの彼の猫背気味の背中が、酷く物悲しいもののように見えたような気がする。
……いや、何を感傷に浸っているんだ、私は。
これこそ、私が望んていたことじゃないか。
もしかしたら、流石の織矢くんも、私の心情を慮ってくれたのかもしれない。
私は自分にそう納得させて、久々に早歩きをすることなく、放課後の廊下を歩いて下駄箱前に到着する。