――パチパチパチパチ!
「!?」
誰もいないはずだった体育館から、小さな拍手が鳴り響く。
驚いた私が、急いでその音がするほうへと視線を向ける。
すると、そこには目を輝かせてこちらを見ている男子生徒の姿があった。
「凄い! 凄いよ、灰谷さん!!」
最初は、すぐにそれが誰なのか分からなかった。
だけど、満面の笑みを浮かべている彼の姿を見つめているうちに、それがクラスメイトであることに、ようやく気付く。
名前は確か、織矢文彦くん……だったと思う。
そして、彼の前には、何か段ボール箱のようなものが落ちていて、その中から備品が大量に飛び出していた。
後から聞いたことだけど、このとき、織矢くんは体育館から演劇用の備品を借りるために倉庫の中にいたそうだ。
そして、荷物をまとめて倉庫から出てきたときに、私の発声が聴こえてきて、そのまま私が舞台の上で踊っている姿を見てしまったらしい。
成程、どうりで体育館の鍵が施錠されていなかったわけだ。
すると、固まってしまったままの私のところまで織矢くんがやって来る。