それは、私が4時限目の体育の授業を終えて、更衣室に向かっているときだった。

「あっ……上着、忘れてきちゃった……」

 その日は、体育館でバレーボールをしていて、外の気温もそれなりに高かったので、体育館の中はサウナ状態になっていた。

 そのせいで、授業が始まるとすぐに上着を脱いで、邪魔にならないよう檀上に置いていたのだけど、終わった後は、そのことをすっかり忘れてしまっていたのだ。

 仕方ない、面倒だけど、体育館まで戻るとしよう。

 幸い、次のクラスの授業までは昼休みを間に挟むので、悪目立ちすることもない。

 それに、幸運なことに体育館の鍵も開いていたので、簡単に這入ることができた。

「あっ、あった」

 そして、すぐに自分の上着を見つけて手に取る。

 これで、私の用事は終わった。

 早く食堂にいかないと、お気に入りの購買パンが売り切れてしまう。

「…………」

 だけど、私は自分が立っている場所から、体育館を眺めてしまった。