その後、あかりは他の友達と会うということだったので、そのままお店の中で別れ、私は家に帰宅した。

 両親は共働きなので、家の中はとても静かだ。

 私は、そのまま2階に上がって自分の部屋へと戻る。

「……はぁ」

 思わず、小さなため息が漏れてしまった。

 本当は、すぐに机に向かって参考書を広げないといけないのだけど、そんな気分にはなれずに、制服のままベッドへ勢いよく身を投げる。

 そして、そのまま仰向けになって天井を見つめたまま、あかりから言われた言葉を思い出す。


 ――やっぱり、恵麻ちゃんは、もう演劇はやりたくないの?


「……あかりの馬鹿。嫌なこと思い出しちゃったじゃない」

 私は、親友に向かって悪態をついてしまうが、それが八つ当たりなことくらい、自分でもよく分かっていた。

 何故なら、織矢くんに追いかけまわされるようになってしまった原因の種をまいたのは、私自身なのだ。

「馬鹿だな、私……。どうして、あんなことをしたんだろう」

 私は、あの日……ほんの2週間まえの出来事を思い出していた。