梅雨の雨に見舞われながら学校へ着くと、下駄箱に置いてあるはずの上履きがない。これで四度目だ。教室のゴミ箱に捨てられていることもあれば、誰かのロッカーや掃除用具入れに隠されていることもあった。とにかく探すのに手間がかかるしイライラする。
クラスの誰もがいま教室で起きている非常事態のことを知っている。でも、誰も何も言わない。関わったら次にターゲットにされるのは自分だと思っているのだ。実際そうなんだろう。柚乃は私に何か恨みがあるというよりも、私が大人しく抵抗しなさそうな人間だから、こんなことをしているに違いない。

「春山さん、また上履き探し?」

このクラスの誰も、助けてくれない。
そう諦めたばかりだったのに、後ろから声をかけてくる人がいた。

「神林……」

神林永遠。
一度柚乃にいじめの犯人にされてから、彼と話した。それ以降、自分の中で彼を見る目が少しずつ変わっていた。

「どっちが先に見つけられるか勝負だな」

「え?」

彼はそれだけいうと、身を翻して教室のゴミ箱や掃除用具入れの中をあさり始めた。
突然のことで頭が追いつかないでいたが、どうやら彼が私を助けようとしてくれているらしいということに気がつき、私も急いで教室中を探した。
ロッカー、教卓、机の中。
ない、ない、ない。
二人がかりで探しても、上履きは2年2組の教室のどこにも見当たらなかった。

「神林、もういいよ。HR始まっちゃうし」

彼は目的のものを見つけられなくて心底悔しそうな顔をしていた。私も、宝探しに破れてもやもやした気分だ。
陰で私を見ながら柚乃と取り巻きたちがクスクス笑っているのが見える。彼女たちの方に、私は目を合わせないように必死に努めた。そうでもしなければ、どんどん大きくなる嘲笑が、心を黒く塗りつぶしていくような気がしたから。