「あっ、愛美ちゃん。スマホ持ってたんだ……って、どうしたの?」
昼休み、智子と一緒に体育館の横のベンチでご飯を食べているところ、何気なく取り出したスマホの画面を見て、わたしは愕然としたまま、智子に問いかける。
「ねぇ……。通知件数が121件って……異常だよね……」
「……うん、異常だね」
ですよねー。
珍しく、智子が引いているのがわかった。
もしかしたら、スマホ初心者のわたしの感覚がおかしいのかもしれないという可能性は、これで消失した。
「変な通知だったら、見ないまま消しちゃったほうがいいよ……」
心配してくれているのか、智子が不安そうな声で聞いてきたけど、お生憎様、迷惑メールみたいな類のものではないのだ。
いや、迷惑であるのは間違いないのだけれど……。
憂ちゃんの忠告を聞いておいて、本当によかったと思いつつ、わたしはそのアプリで展開されているやり取りを確認した。
『今日、職場に行くとき黒い猫が横切った! こわいっ!』
『大丈夫ですよ、由吉さん。今日もお仕事頑張ってくださいー』
『ありがとう、久瑠実さん! みんなも気を付けろよ』
『はーい。ってか、猫が横切っただけで大げさすぎ(笑)』
『いやいや、迷信って油断してたら怖いんだぞー』
『父さん、心配しなくても、ある地域では黒い猫が横切ったら、幸福の訪れの兆候なんていいますよ』
『あら? ということは由吉さん、今日はラッキーな日なのかもしれませんよ?』
『おおっ! そうだったら嬉しいな!』
『じゃあパパ、運試しに宝くじ買ってきてよ。もちろん当たったら私のお小遣いだからね?』
『よしっ、じゃ、帰りにロト6買ってくる!』