机に置かれている時計を見ると、時刻は六時を過ぎたくらいで、窓のカーテンからも、朝の日差しが漏れていた。いつもより早く起きてしまったらしい。

 だけど、二度寝するには、中途半端な時間だった。

 仕方ないから、学校に行く準備をすることにしよう。

 部屋の鍵を閉めて(さすがのわたしも学習はするのだ。こういうときに限って、由吉(ゆきち)さんは来なかったが)制服に着替える。

 1週間も経てば、知らなかった制服も着慣れるものだ。

 そして、そのまま部屋でゆっくりしようと思ったのだが、どうしても喉が渇いてしまって、わたしはリビングに向かってしまった。

 すると、キッチンにはちょうど朝食を用意している久留実(くるみ)さんの姿があった。

「あら? 愛美(まなみ)ちゃん……? 今日は早いわね……」

「……ええ、ちょっと目が覚めて」

 わたしは適当な相槌を打ちながら、冷蔵庫から麦茶を頂く。

 今は家族全員分のお弁当を作っているようで、卵焼きの美味しそうな匂いがただよってくる。

 その家族分のお弁当に、わたしの分も含まれていることに、わたしは目を背けそうになってしまった。

「そうだ、愛美ちゃん。愛美ちゃんは何かお弁当に入れてほしいものはあるかしら?」

 わたしの視線に気づいたのか、笑顔でそう問いかけてくる久留実さん。

「……いえ、久留実さんの作ってくれるものは何でも美味しいですから、大丈夫です」

「あら~、そんなこと言ってくれるなんて、とても嬉しいわ」

 わたしの言葉を素直に受け止めて、久留実さんは朗らかな笑顔を浮かべる。

「でも、食べたいものがあったりしたら、いつでも遠慮なく言ってね。私もお弁当のメニューを増やすことができるから」

 そう言ってくれた久留実さんに、わたしは「検討しておきます」なんて堅苦しい返事をして、キッチンから出て行った。