「イヤッ!」

 跳ね起きたわたしは、うるさく鼓動する心臓を抑えながら、息を整えようとした。

 汗でぐっしょりと濡れた自分の身体が気持ち悪くて、胃に残ったものを全て吐き出しそうになるのをなんとか堪える。

 全く、なんて夢を見させるんだ。


 大丈夫。

 ここは、あのときの、あの場所じゃない。

 耳を澄ませても、何も聞こえない。


 そして、お母さんもいない。

 だから、大丈夫。


 そう自分に言い聞かせているうちに、頭に張り付いていた景色が消えていく。

 呼吸もうまく元のようにできることを確認すると、随分と気持ちも落ち着くことができた。