結局、わたしが買ったのは、シンプルな白を基調したスマホで、料金プランも一番安いものにした。
これは、これ以上近江家の人たちの迷惑にならないようにという、わたしなりの妥協点だった。
憂ちゃんには、彼女らしい派手なピンク色をした多機能なスマホを推奨されたけれど、もちろん断った(結構強めに)。
っていうか、親戚名義でも携帯電話って買えるんだ。保護者扱いになるのかな?
いや、別に今はそんなこと知る必要はないか。
とにかく、携帯を買うときに、両親に連絡しなくてはいけないという最悪のシナリオだけは勘弁してほしいところだったので、わたしはホッとした。
「よーし。それじゃ早速、連絡先を交換しようか!」
店員さんが丁寧に初期設定をしてくれたスマホをわたしが受け取ると、由吉さんが子供のようにはしゃいでわたしにそう告げる。
日曜日なので、店はそれなりに人がいたので、恥ずかしい。
まるで、わたしがナンパされていて、連絡先を聞かれているみたいじゃないか。
……いや、さすがにそれは無理があるか。
如何せん、携帯電話というものを持ったことがなく、ガラケーという類のものですら触れたことがないわたしは、操作に手間取ってしまったけれど、隣で蓮さんが丁寧に教えてくれたので、なんとか連絡先の交換が完了した。
「ふふふ、私もこれで、安心だわ」
久瑠実さんも、嬉しそうに微笑む。
本当に些細なことでも、何でも楽しそうにする人たちだ。
わたしには、その感情がさっぱりわからなかったけれど。
それから、しばらく店のなかで憂ちゃんからのレクチャーを受けて、一通りスマホの操作を学習した。
智子の勉強の教え方と比較するのは少しおかしいかもしれないが、憂ちゃんは典型的な知っていることを教えるのが苦手な子だった。
フリックって一体なに?
初心者に専門用語混ぜないで。