その結果、『近江由吉』という人物はノートの名前の横に、唯一『○』という記号と、中学生から見ればおよそ想像できない大金の数字が記されてあったことが後になって分かった。
どうやら、相当のお人よしか、ただの馬鹿のどちらかに分類できる人間のようだ。
それから、『近江由吉』なる人物は、わたしのお父さんとお母さんに連絡をとって、わたしを預かることが正式に決定するまでの手続きも全部請け負ってくれた。
もちろん、お父さんもお母さんから、反論なんて何もない。
わたしが親戚に手紙を送っていたことも、何も言われなかった。
もう、両親たちの中にわたしのことなんて存在していないことに、ようやく気付く。
だけど、それを悲しいと思わないくらいには、わたしはもう可笑しくなってしまっているのだろう。
わたしは、最後に顔を合わせた両親には何も言葉を残すことなく立ち去ってきた。
あの人たちは、わたしなんて、いてもいなくても一緒なのだ。
むしろ、厄介者を引き取ってくれて、ありがたいなんて思ってたりして。