そんな、戦々恐々と怯えるわたしだったが、着いた先は、わたしが初めて由吉さんと出会った駅の駐車場だった。
「よし、それじゃ、行こっか」
車を降りた由吉さんを先頭に、わたしたちが向かった先は某携帯ショップであった。
ん? 携帯ショップ?
何だろう。誰か機種変更でもするのだろうか? なんて他人事のように呑気に考えていると、店に入ってショーウィンドウの前まで来て、由吉さんがわたしに言った。
「さぁ愛美ちゃん! 好きなものを選んでいいよ!」
「……ふへっ?」
思わず、ヘンテコな奇声をあげてしまった。しかし、そんなことは全く気にした様子のない由吉さんの代わりに、隣にいた久瑠実さんが、優しい声で説明してくれる。
「愛美ちゃん。携帯持ってないでしょ? もう中学生なんだから、持ってないと不便だと思って由吉さんに昨日相談したら、『それじゃ、明日、みんなで買いに行こう』ってことになったの」
「はぁ……」
なるほど、そういうことか……って素直に納得できるほど、今のわたしに心の余裕はなかった。
なんでやねん、と関西圏の人間でもないのに、ツッコミを入れたくなる。
確かに、わたしは携帯電話を持っていなかったし、今や中学生にとっては必需品であるのはそうなのだけれど、さすがに近江家にそこまでお世話になるわけにもいかない。
まさか、あの人たちがわたしの携帯電話料金なんて、払ってくれるわけもないし(食費といった、生活費すらちゃんと近江家に払っているのか、微妙かもしれない)。
ただでさえ居候として迷惑をかけているというのに、これ以上、近江家の人に負担を掛けるわけにはいかない。