わたしは今、近江家に来るとき以来に乗る、白いミニバンの座席に、ちょこんとおとなしく座っている。
もちろん、運転手は由吉さん。
それは以前と変わらない。
しかし、この前と違うところをあげると、わたしは助手席ではなく、後部座席に座っていた。
そして、左には久瑠実さん、右には憂ちゃんというポジショニングで、助手席には、蓮さんが乗っていた。
「うふふ、こうしてみんなと出掛けるのって、久しぶりね」
「そうだよ! 特に、蓮お兄ちゃんは塾とか学校が忙しいって言って、全然家に居ないし」
「あはは、ごめんごめん。でも、今日はちゃんと予定を空けておいただろう?」
嬉しそうに微笑む久瑠実さんに、不満を漏らしながらも楽しそうにする憂ちゃん。
そういえば、以前、憂ちゃんは『みんな忙しくて遊んでくれない』なんて言っていたっけ?
その欲求がわたしのところに向けられてしまったのは甚だ迷惑だったのだが、どうやら、これから家族団らんで何処かへ出かけるらしい。