そんな感じで、わたしの近江家での生活が1週間ほど過ぎたあたりで、これは当たり前の事象なのだけれど、学校もなにもない、世間で言う、休日がやってきた。
そう、日曜日の到来である。
日曜日。
それは、ほかの学生たちにとって、どういう時間なのかわたしは知らないけれど、少なくとも、わたしは大嫌いな時間だった。
大嫌いな家族の家に、1日中いなきゃいけない時間。
わたしにとって、苦痛の時間であったのは確かだ。
最悪だ。
思い出しただけで頭痛がしてきた。
だけど、もうわたしはそんなことも悩む必要なんてない。
――はずだったのだが。
「あー! 蓮め! また父さんばっかり狙ってるだろ!」
「父さん、これも作戦ですよ。相手の不安材料をつく。勝つための基礎中の基礎です」
「ちょ! パパなんでロブばっかり打つわけ! スマッシュ打たれちゃうよ!」
「ほらほらー、みんながんばってー」
わたしは、新たな悩みの種を抱えていた。
「よしっ、愛美ちゃん、今だよ」
「えっ!? ええと……!」
蓮さんの合図で、わたしは慌てて自分の右手を振り降ろした。
すると、画面の中のわたしのアバターは、見事なフォームでスマッシュを放った。
「あー、ほらっ、パパのせいで負けちゃったじゃない!」
ふくれっ面でそう呟いた憂ちゃんは、持っていたコントローラーをソファに投げて自分もそこに倒れ込んだ。元々座っていた久瑠実さんは、乱れてしまった憂ちゃんの髪を整えてあげていた。
「やったね。愛美ちゃん。僕たちの完全勝利だ」
満足げに眼鏡の位置を整えながら、蓮さんがわたしを見てくる。多分、今のわたしはどんな反応をしていいのかわからず、苦笑いを浮かべていることだろう。