ただ、わたしはあの場所から逃げ出したかった。
 自分の家族が暮らす家から1秒でも早く離れたかった。

 だが、こんなのはたから聞けば頭の悪い話だったし……うん、何の考えもない中学生らしい、馬鹿な計画だったと思う。


 でも、たった1通だけ返事があった。


 数日後、『近江(おうみ)由吉(ゆきち)』なる人物から、手紙が届いたのだ。
 しかも返信の内容は『それなら是非、うちに来なさい』という了承と受け取れるようなものだった。


 驚いた、なんてものじゃない。


 やっとわたしは、解放されるんだ。


 思わず、そんな言葉を叫びそうになりそうだった。

 念のため、わたしは手紙の返信をくれた近江さんという人を、もう一度ちゃんと調べてみることにした。

 といっても、人物像を調べる要素なんて、両親が残したメモしか存在しない。

 だが、何もないよりはマシだと自分を納得させて、その人物像を洗い出してみた。