倉敷さんは、意外にも押しの強い女の子だった。
その積極性は、是非とも掃除を押し付けてくる同級生に発揮してもらいたいところだったが、彼女のなかで、たとえフリだとしても、『友達』相手ならば言いたいこともちゃんと言えるようであった。
「それじゃあさ、友達っぽく、まずはお互い下の名前で呼び合おうよ」
昼休みのチャイムがなる前に、教室に戻ろうとしたわたしにそんな提案をしてきた。
嫌だ、と、即座に言いたかったが、一度承諾してしまった以上、やるなら徹底的にやったほうが良いだろうと思う建設的な自分もいた。
変なところで、わたしは几帳面なのだ。
「わかったよ。智子……って、呼べばいいの?」
「うん、ありがとう、愛美ちゃん」
……本当に躊躇がないな、この子。
色々いいたいことはあったけれど、今は素直に倉敷さん……智子の好きなようにさせてあげよう。
どうせ、いくらフリだからといっても、わたしと一緒にいるなんて、いつかは耐えられなくなるはずだ。
ただ、利用させてもらう分には、存分に利用させてもらおう。