「あのさ遠野さん、やっぱりわたしたち、友達になれないかな?」

「……は?」

 この子、とんでもないこと言わなかったか?

「友達って、あの友達?」

「うん。教室でおしゃべりしたり、お弁当を食べたりする、あの友達」

 ほかにどんな友達があるの? と無邪気に笑う倉敷さん。

 いやまぁ、わたしも他の友達なんて知らないけどさ。

 そんなことはともかく、まさか暗喩的に倉敷さんが『一緒に世界を支配しようぜ!』なんて言っているなんて考えたわけじゃないことくらいはわたしにでも分かる。

 しかし、友達って……。

「嫌だよ。面倒くさい」

 それこそ、わたしはここで、きっぱりと断った。

 これ以上、わたしを困らせるようなことはしないでほしい。


 ――お願いだから、わたしと関わろうとしないで。


「でも、わたしは遠野さんと、友達になりたい」

 だが、倉敷さんは一向に引き下がってくれる気配がない。わたしをこの場所に連れてきた時と一緒だ。

 えっと、こういうときは、何て表現すればいいんだっけ。

 すっぽんみたいに、しつこい奴だ。と、言えばいいのだろうか?

 ……なんだか違う気がするが、それこそわたしの心境は、すっぽんに噛みつかれたような感覚だった。

「わたしと友達になってもいいことないって。やめときなって」

 だから、わたしは彼女を拒否する言葉を言い続けるしか抵抗の手段を持っていなかった。

「そう……」

 わたしの説得が功を奏したのか、倉敷さんが若干引き下がってくれたように見える。

 この辺が潮時だ。

 そう思ったわたしは、まだ途中だったお弁当のふたを閉めて退場しようとしたところで、