たまたま家で見つけた、親戚の名前と電話番号、住所が書かれたノート。
名前の横には、殴り書きのように『×』と書かれていたから、きっとお金を借りようして、親戚中に連絡を取っていたのだろう。
わたしにとっては、嫌いな両親のことがますます嫌いになる要因の1つにしかならないものだった。
だけどわたしは、そのノートを見て、1つの決断をした。
今から思えば、無謀と言うか、突拍子な考えだったと思う。
あろうことか、わたしは一通りそのノートに書かれた名前と住所をメモして、片っ端から手紙を送ったのだ。
そのノートには、電話番号も書かれていたけれど、いきなり電話をするのはさすがにハードルが高すぎるし、文章ならば、いくらかわたしの話の内容に真剣さが伝わってきそうな気がするんじゃないかという安易な考えもあったのは事実だ。
そして、手紙の内容は、一度、父親と母親と離れて暮らしてみたい、というものにした。ただし、中身はわたしからは想像もできないような、至って積極的というかポジティブなものだった。
高校生になったら海外にホームステイしたいので、その練習として(今から考えればこれはこれで失礼な言いかただったかもしれない)他の家で生活をしてみたいという旨を手紙に書き記したのだ。
もちろん、海外にホームステイしたいなんて全然これっぽっちも思っちゃあいない。