なんて、わたしが言うには些か皮肉めいている台詞は最後まで口に出すことはなく、2人で並んで校舎の廊下を歩く。
そして、久瑠実さんが作ってくれたお弁当を持ちながらやって来たのは、体育倉庫の横にちょこんと設置されていたベンチだった。
どうしてこんなところに3人掛けのベンチが設置されているのかは不明だったが、わたしにとって幸運なことに、人が近づいてくるような気配がない場所だった。
「ここね、人目につかないから、わたしのお気に入りなんだ。本を読んだりするときに、落ち着けるから」
ベンチにハンカチを敷きながら(わたしの分も合わせて2枚敷いていた)そんなことを言う倉敷さん。
だけど、わたしはそのベンチに鎮座する前に、どうしても、倉敷さんに伝えなくてはいけないことがあった。
1対1なら、猫を被る必要もない。
「あのさ、わたしに関わろうとするの、やめてもらえないかな?」
今度は、きっぱりとした、拒絶の言葉を口にする。
すると、自然と、今まで溜めてあった感情が、次々と吐きだされた。
「わたし、誰かと慣れあうとか、そういうの無理だから。あんたは、昨日のことでわたしに恩義を感じているのかどうか知らないけれど、わたしにとってはすっごい迷惑なの」
本来のわたしの姿をみて、倉敷さんは分かりやすいくらい目を見開いてこちらを見ていた。
それでも、わたしは自分の言葉を口にすることを止めない。
「それに、さっきもいったけど、あなたを助けようとしたのは、わたしじゃなくて隣に居た子。学年は違うけど、あの子なら、あなたのお望み通りの関係を築けるんじゃない?」
全てを吐き出し終わっても、倉敷さんは固まったまま何も言わない。
少し、やりすぎてしまっただろうか?
いや、今さらそんなことを気にする必要もないか……。
言いたいことは、全部言えたのだ。
わたしは、もうここに用はないとばかりに踵を返そうとした。